都市部ではよく見かけ、土地が狭く縦長の住宅のことを狭小住宅といいます。
このページにたどり着いているということは、これから狭小住宅を建てようかと考えている方でしょうか。
人口が多いエリアや通勤・通学が便利な場所は人気があり、そのため土地代も高く、余裕のある敷地を確保できないのが現状です。
このような背景があり、狭い土地に家を建てる狭小住宅が注目を浴びています。
では、この狭小住宅の価格相場や、住宅としてはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
そして、土地が狭い、土地の形状が変形(四角い状態ではなく三角形や台形など)していることで思うような間取りができないなど、悩みを抱えながら間取りを検討されている方も多いと思います。
今回はそのような悩みを解決すべく、後悔しないための狭小住宅の注意点についても解説したいと思います。
狭小住宅の価格について
どのような家にでも共通に言えることですが、どういった間取りにするかをあらかじめ決めてからでないと正確な価格はわかりません。
とくに狭小住宅の場合は立地が特殊であるケースが多く、住宅のプラン次第では様々な費用が重なってしまい、最終的に総額が上がってしまう傾向にあります。
生活スペースに限りがあるため、それを確保するためにはどうしても高さが必要になります(縦長になる理由はここにあります)。
また、隣接している住宅が多い場所に建てられることが多いた、隣家との防音対策も必要になり、場合によっては地盤改良の費用も必要になります。
地盤改良は、改良の工法や地盤の状況、建物の大きさや構造によって大きく変わってきますが、2階建てと3階建てとでは建物そのものの重さが違うため、必要な地盤の強さも異なってきます。
その他にも、木造と鉄筋コンクリートのどちらにするかについても、建物の重さの違いから地盤改良の価格が変わってきます。
狭小住宅はその他のスペースに費用がかかる
もし駐車場が必要であれば、その分のスペースが別で必要になるため、価格が上がってしまいます。
敷地上に駐車場を確保できれば問題ありませんが、それが難しい場合、建物の1階部分を駐車場にするビルドインガレージの設置を検討する必要があります。
基本的に土地のスペースが少ない場所に建てるため、建築時における足場や資材置き場に費用がかかる場合もあります。
そして、通常の足場よりも狭い場所で作業ができる経験を積んだ職人が必要になり、このようなケースでも別途手間賃を支払うこともあります。
狭小住宅の相場とは
狭小住宅を建てる場合、間取りや外観等の希望を決めてからでないと正確な価格はわかりませんが、はたして一般的な相場はどれくらいなのでしょうか。
建てるエリアの土地代や住宅のタイプにもよりますが、20坪程度なら住宅費込みで3,000万円~4,000万円程度で、木造住宅の坪単価は約55万円、鉄骨造住宅の坪単価は約70万円、鉄筋コンクリート住宅の坪単価は約80万円が相場となっております。
木造と鉄筋の場合を比較するとずいぶん金額に差がありますが、法定耐用年数(木造住宅が22年、鉄骨造住宅が34年、鉄筋コンクリート住宅が47年)があるため、相場価格については高い安いで比較することはできません。
狭小住宅の建築コストを抑えるには
土地選び
土地選びは慎重にする必要があります。
地盤改良があることを考え、例えば、崖の途中にある土地や変わった地形の土地などは通常よりも安く購入できますが、狭小住宅を建てるには費用がプラスαでかかります。
それは、地盤改良でかかる費用とは別に特別な機材が必要になり、クレーン車が入れないなどの理由で建築費が増える要因にもなりますので、土地代が安いだけという理由で決めるのはやめましょう。
コンクリート造と木造
住宅タイプを木造、もしくはコンクリート造にするのかで費用が変わってきます。
短期的に考えると木造で建てる方が安くすみますが、長期的に考えるとやはりコンクリート造の方が良い場合が多いです。
コスト的に安いだけではなく、今後、自分たちがどのようなライフスタイルで過ごしたいかを考えて選択してください。
シンプルな建物と間取り
コストのかからない方法は、建物をシンプルにすることで費用を抑えることができます。
外観や間取りといった住宅構造が複雑になればなるほど、手間も時間もかかりますので、その分の工程費用が上乗せされてしまいます。
手間がかかるということは、それだけ人件費がかかり建築にコストが必要になりますので、建物や間取りをシンプルにすることでコストを下げることが可能となります。
狭小住宅はコンクリート造が最適
自由度の高い鉄筋コンクリート住宅は限られた敷地を有効的に使って建築が可能です。
木造住宅と比較すると強度があり、柱などに使用する体積が少なくすみ、開放的な大きな窓の設置ができるため、視覚的にも自由な間取りにすることができます。
また、住宅密集地に建設されることが多いため、隣接している建物の「音」が気になりますが、遮音性能に優れているため防音対策にもなり、外からの音だけでなく、室内の音漏れを防ぐこともできるため、鉄筋コンクリートと狭小住宅は相性がいいのです。
そして、コンクリートは耐火性能においても優れているため、防火地域に指定されている狭小地でも安心です。
狭小住宅のメリット
ここまでの内容で、狭小住宅のメリットとなることを簡単に挙げます。
建築コストが低くなる
住宅にかかる面積が狭くなる分、格段に安くなるというわけではありませんが、それでもだいぶコストを抑えることができます。
また、登記費用などの各申請費用や、土地の面積によってかかる税金の額が変わってくるため、面積のある住宅よりも安く抑えられます。
もちろん、固定資産税などもその類に含まれるため、結果として安くなります。
デザイン性
狭小住宅は住宅面積が狭い分、横ではなく縦に伸びる家になります。
そこで建築設計者は、建物にデザイン性をもたせておしゃれに仕上げてくれるケースが多く、細長くすっきりとしたデザインは一目置かれる存在になります。
狭い土地でも建てられる
住宅を建てる土地がたとえ狭くても、都心にマイホームを持つことが現実的に可能です。
狭小住宅のデメリット
メリットだけでなく、デメリットも踏まえてよく検討してみてください。
間取りの難しさ
土地面積が狭いので多くの部屋を作ることは難しく、動線をよく考えなければ住みにくい家になってしまいます。
また、ゆとりのある広々とした間取りは現実的に難しくなるため、その打開策として、3階建て住宅にするケースを多く見かけます。
工事が難しくお金がかかる
敷地やその周りの道路が狭い場合、工事が難しくなり余計にお金がかかったりします。
通常の建築であれば、空いている道路に資材を置いたりしますが、狭い道ではそれができず、近くに置き場スペースを借りたりするため費用が上乗せになってしまいます。
防音対策が難しい
近隣の建物に囲まれる場所に建てるケースがほとんどのため、自分の家から出る音と、近隣から出る音には気を使わなければなりません。
気になるようであれば、事前に防音対策が必要になってくるでしょう。
住宅会社を絞り込む前にすること
実際に狭小住宅を建てる場合、依頼する会社を探してお願いすることになりますが、人に得意不得意、長所短所があるように、住宅会社においても各社それぞれです。
あまり時間をかけず検討しない状態で決めた業者にお願いすると必ず後悔しますので、そうならないためにも、まずは、どのような種類の業者があるのかを把握しておきましょう。
大手ハウスメーカー
多くの施工実績があるため、さまざまな条件に対応できる設計・施工が可能です。
しかし、支店展開しているエリアによっては、得意とする施工とあまり施工事例のない所もあり、個別対応という点では、地域密着の工務店や設計事務所に比べ融通が利かない場合もあります。
地元の工務店
所在エリアでの施工実績では大手住宅メーカーには劣りますが、それなりの実績があります。
しかし、工務店によっては、社長色が強い傾向にあり、職人肌らしく施主ペースというよりは工務店ペースで計画の工程が進められてしまうこともあります。
築設計事務所
設計施工が同一会社、もしくは設計と施工が別会社という2パターンがありますが、ほとんどの建築設計事務所は施工会社と契約を締結して組んでいます。
設計士のオリジナル発想や、固定観念にとらわれない斬新なアイデアも多く提案されますが、独創的な設計に偏り過ぎて施工が追い付かないというケースもあり、トラブルのもとになることもあります。
業者の規模やその業者の沿革、施工実績などには差がありますが、なんといっても自分たちの状況、要望をしっかり受け止めてくれる業者かどうかの見極めが必要です。
業者絞り込みには、コンペ制を活用する
ご自身で調べたりしたうえで、ある程度の建築知識や情報収集ができた後、業者の絞り込みをすることになるのですが、コンペという言葉を聞いたことはありすか?
よく大型物件(商業施設や学校、別荘等)やマンション建築においては、コンペによって業者が決定されています。
コンペとは、施主と業者が直接商談や交渉をする前に、その間に入って両者の仲介をすることを言います。
いわゆるマッチングサービスになるのですが、コンペのマッチングサービスを業務としている会社があります。
マッチングサービス会社は、施主の思いや希望、考え方をヒアリングし、その施主の思いを実現化できそうな業者を選択し、実現可能かどうかを判断します。
そして、マッチングサービス会社が絞り込んだ業者(5~10社社程度)と1業者毎に、施主と商談する場を設け、初めて施主と業者が面会します。
このコンペのマッチングサービスを利用するメリットは、以下のようなものがあります。
- 第3者的目線で業者を選択してくれる
- 仲介することで、施主の安心感がある
- 登録している業者は大手から個人の設計事務所まで幅広い
- 建築に経験豊富な人材が揃っているので、話がスムーズに進む
- 施主が常に直接業者と商談する手間も省ける
その反面、以下のようなデメリットもあります。
- 業者と直接商談ではないので、相談費用が建築価格の数%発生する
- 施主のお気に入りの業者が選択されるかはわからない
デメリットの方が少ないですが、もし利用する場合、住宅建築の総費用において少し負担増になることだけ覚えていてください。
また、マッチングサービス会社が業者の絞り込みをしたからといって、そのうちのどれかの業者に決める必要はありません。
ご自身の建築するエリアにそういうマッチングサービス会社がないこともあるため、そのような場合、インターネットで仲介してくれるタウンライフ家づくりのようなマッチングサービスサイトを利用するものひとつの手です。
当然ですが、ご自身が希望する業者を入れても構いませんし、そういう点は自由ですから、遠慮することなく話をすることが必要です。
狭小住宅の場合は、施工する前に信頼できる仲介パートナー選び、通常の家を建築するよりも少し大変ですが、コンペ制を活用することをお勧めします。
狭小住宅でコンペ制を勧める理由
狭小住宅というのは通常の物件とは異なり、特殊物件の扱いになります。
大手ハウスメーカーや工務店では、ある程度の間取りのニーズに対応できる企画型プランという商品があり、ハウスメーカーによっては100以上のプランがあり、平屋住宅、二世帯住宅、3階建て住宅など網羅されています。
ご自身の要望する間取りが最終的に数ある企画型プランの一つに収まるのであれば、通常よりも家を建てるコストが軽減され、価格を抑えることができるメリットがあります。
ところが、狭小住宅というのは、企画型プランには当てはまることがほとんどありません。
なぜなら、企画型プランを予め商品化するメリットが業者にはないからです。
そのため、狭小住宅は、注文住宅としての設計力が問われる住宅ともいえ、自信のある業者が競い合うコンペ制をひとつの案としてお勧めしました。
業者の絞り込み後の流れ
では実際に、マッチングサービス会社が施主のマイホームの思いや希望、考え方をヒアリングし、5~10社の業者に絞り込みしたという想定で解説したいと思います。
マッチング会社は、絞り込んだ業者がどこなのかを施主に伝え、初めて施主と業者の1社ずつの商談が始まるのですが、施主が話をするというよりは、業者の方が会社説明や施工実績、一連の計画工程、アフターサービス、保証内容等々を説明する場となります。
業者はふるいに掛けられる訳ですから、懸命に次につながる商談に繋がるよう施主にアピールしてきます。
そして、マッチングサービス会社が絞り込んでくれた業者とに面談が一通り終わった時点で、施主は3~5社くらいまで業者を選びます。
もちろん数の制限はありませんので全てを選んでも問題はありませんが、マッチングサービス会社を活用するメリットがなくなってしまうため、頑張って絞り込みましょう。
狭小住宅は設計力が鍵
業者の絞り込みをした後は、各業者に間取りの希望やどのような家を建てたいか、とくに妥協したくないことなどの優先順位を伝え、それを盛り込んだ初めてのプレゼンテーションが始まります。
そこで、狭小住宅を建てる場合の重要なポイントは、各業者の設計力になります。
そのポイントは2つあり、まずは、設計士からの具体的な新しい提案があり、その提案が自分たちにとって大きなプラスになるかどうかです。
もう一つは、平面的空間だけではなく、立体的空間の活用を積極的にわかり易く説明してくれて、狭小ならではの生活導線が考えられている間取りになっているかです。
狭小住宅だからといって、可能な限りご自身たちご家族の要望は事前に整理しておき、設計士と打合せする中において、全て設計士の言いなりになることではいけません。
できること、できないことを明確にするためにも、ご自身たちの要望と設計士の提案は必ず擦り合わせすることが大切です。
妥協点はどこか、広さの確保は難しいけれど上下の空間(立体的空間)を上手に活用できているか、間取りの動線が上手く考えられているかがポイントになります。
まとめ
狭小住宅の大よその価格相場と、失敗しないための業者選定としてコンペ制の活用方法、何よりも設計力が重要ということを中心に解説してきました。
業者さえ決定してしまえば、あとは最終決定した間取りや仕様が形になるまでスムーズに事が運ぶと思います。
ただし忘れてはならないことは、業者が決まったからといって任せっきりにするのではなく、施工現場にはできるだけ足を運ぶことです。
特に狭小住宅の場合は、施工段階でしかわからないことや、変更箇所が出てくることがよくあるため、家が完成するまでは、自分たちも一緒になって建てているという意識を忘れてはいけません。
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